Statement


What color is your feeling now?」

 

 

 現代は多様化する社会と同様に、彫刻という言葉で括ることさえ困難な表現形式の解釈がなされています。

 そこで新たな具象人体彫刻表現の追究を目指し、私は彫刻における「形態と色彩」を主題に作家活動をしています。

 この観点から「~あなたの『感情』は今、何色ですか?~」という言葉を制作のコンセプトに『感情』をテーマとした作品づくりを展開しています。

このテーマである『感情』は人間の主に意思行為などで表れますが、それは実態のない曖昧なものです。もし、それを視覚的に作品表現するとしたら「かたち」と「色」、この2つの要素にて表されるのではないかと考えました。


 まず「かたち」は人間の外面において感情が視覚的に表れやすく象徴的な“顔”を題材にしました。それは作家自身をモデルとしてつくることで制作者と作品との認識が一致させ"肖像彫刻"としても成り立つようにしました。そしてもう一方では人間の内面に焦点をおきました。古来より「色」という言葉は様々な感情を表す単語や意味で使われていました。そして人間の感情は常に変化しています。その変化を「色」に例えて表しました。

 それらを「かたち」と共に作品として、同一の顔の表情に様々な色彩を施すことで、人間の外面・内面の感情の変化を視覚的に作品表現したものです。

 

真海 宏之


"It's me !!" 2008
"It's me !!" 2008

 


 

『感情』は意思・行為などで表すが、それは実態のないあいまいなものだ。
それを視覚的に自分自身を“かたち”で表し、心情を“色”で結びつけた。

“かたち(頭部)”は、人を表す象徴的な部分であり感情が強く表れる。
“かたち”を強く表すために表情はつけていない。
また“色”はそれから受ける心情を組み込む事で人間の感情を視覚的に表している。

人の感情は常に変化している。
あなたの『感情』は今、何色ですか?

                             

 

 

We express "emotion" through things like intentions and actions.but that idea is rather ambiguous, without real existence.

This work expresses the self visually as "form," connecting feelings with "color."

The "form (head)" is a symbolic element that expresses the person, and emotion is emphasized.
In order to emphasize "form," facial expressions are not added. In addition, the "color," by including the feeling it derives from the emotion,
expresses the person's emotion visually.

A person's emotions are always changing.
What color is your feeling now?

                              SHINKAI Hiroyuki



『 Form & Color/Modeling 』

一般に彫刻という言葉は“彫り刻む”表現(カービング)として捉えられ事が多く、“積み重ねる”表現(モデリング)である手法はさほど認知されてはいないようです。その様な中で私は、父や祖父が具象彫刻の作家であり、モデリング手法にて作品を作り上げる経過を見て育ちました。そして自身の表現を模索・形成する過程において様々な素材に触れ、結果この手法を選択することはごく自然な流れでした。
この手法は、積み重ね・加え、時に削り・省くという、プラスとマイナスの工程の繰り返しです。それは一部だけでなく作品全体にそれを用いています。様々な要素を足し・省き、整理と構築をイメージとシュミレーションの積み重ねにて作品を組み立てます。この行為が私の制作の基礎となる『モデリング(Modeling)』になるのです。

そして作り上げる私の作品は、伝統的な彫刻の概念と素材・技巧・思考などの様々な現在性側面を持つ要素を組み合わせ、いまを生きる作家としてのひとつの作品を表現しています。彫刻領域の形態美の探求を原点に、素材感が優先しがちな着色、“かたちに着飾る”色の概念からポップで鮮やかな色合いを使います。それは彫刻作品の色彩観念への変化を目的とし、「形態(Form)」と「色彩(Color)」の2つの要素を作品の中で同等に意識し扱い、両立させた造形美を目指しています。そしてそれらを効果的に表現する手法として用いているのが、構成の観念です。反復や左右対称・統一など、一定の秩序の中で要素を組み立て整理していく、この行為はモデリングにも通じる考え方でもあります。

このようにイメージをモデリングの観点から構築していく制作行為において、秩序を持たせた作品は、独自の特色として存在感を促し、分野・領域への理解と探求に繋がるよう展開しています。これを『 Form & Color/Modeling 』という図式にて表し、制作活動の方針として示しています。